納豆コーヒーゼリーサンドに罪はない【許すまじ社長の反応】
前回の記事はこちらから読めます↓
はてなのお題に乗っかります。
7月10日は「7(な)10(とお)」で『納豆の日』ってことですね。
納豆で思い出すのは,東京の代々木にあった,鞍馬というサンドイッチのお店の納豆コーヒーゼリーサンドです。
納豆とコーヒーゼリーと生クリームが絶妙なバランスでサンドされた一品でした。
コーヒーの苦味と,生クリームのコクと甘さが納豆に絡んで,納豆ならではのネバネバが少し抑えられ,独特の歯ごたえとなっておいしかったんです。
代々木のお店は,もう10年くらい前に閉店してしまい,いまは三重県鈴鹿市の1店舗のみだそうです。
この珍しさのあまり,誰かに勧めては「おもしろいでしょ?」というのが楽しかった時期がありました。
あらかじめ,納豆が食べられるとわかっている人に向けてのみでしたが。
勧めた人は誰もが,おもしろいね〜と笑ってくれていました。
ある日,知り合いの社長に勧めてみようと思いつきました。
今もつきあいのある人なので,あまり悪くは言えませんが,当時で60代に入ったくらいの,お腹にでっぷり脂肪が詰め込まれている,グルメ気取ったおじさんです。
たまたま周りのスタッフと,この納豆コーヒーゼリーサンドの話題になったのですが,社長はどういう反応するかな?と考え,尋ねてみることにしました。
せっかくだから,サプライズ的に“これ,何が入ってるでしょう?”みたいにしてみようっと。
「社長,今度,おもしろいものを持ってくるので,食べてみてもらえませんか?」
すると社長は,「何を持ってくるんだ?」と訊き返してきます。
「おもしろいものなので,楽しみにしててください」
それだけ伝えておきました。
いつも,おいしいものや珍しいものを喜んでいる姿を見ていたので,どんなふうにコメントするのか,出すほうとしても楽しみにしていたのです。
そしてある日,約束どおり,代々木の鞍馬で納豆コーヒーゼリーサンドを買い,社長に手渡しました。
「この間,お話ししていたものです」
受け取って一口食べた社長。
「ふーん」
え。
それだけ?
いつも「これおいしいな」とか「初めて食べたよ」とか言ってくれるのに。
それ以上も,それ以下も言わず,無表情で終了しました。
「ふーん」以外の言葉は何も発せられませんでした。
なんで…?
いつもと反応が違う。
すごーくがっかりです。
凹みました。
いつもなら「おもしろいね」とか言うのに。
社長のいない所で,スタッフに訊いてみました。
「社長に食べてもらったら何と言うだろう」と私が話していたことを知った社長は,「何を持ってくるんだ,言え,言え!」と詰め寄ったといいます。
尋ねられたスタッフは,「納豆とコーヒーゼリーと生クリームのサンドイッチだそうです」と答えたらしいのです。
その人曰く「社長は,食べ物で失敗するのが嫌なんだろう」ということでした。
私がマズイものでも持ってくるとでも思ったのでしょうか。
信用されてないんですね,私って。
私も,思わせぶりなことを言わなければよかったんですね。
とはいえ,「ふーん」だけで済まされた私のみじめさ。
なんなんだ。
こんなにおいしいのに。
いや,楽しげな反応を期待した私がバカだったんですね。
はいはい,そらどうもすみませんでした。
社長には今後,おいしいものも珍しいものも一切差し上げません。
許すまじ。
…口には出さないけど。
納豆というと,この出来事を思い出すのです。
納豆コーヒーゼリーサンドに罪はありません。
かといって,自分で作ってみようという勇気もありません。
あの絶妙なバランス。
あんな頭の固いおっさんになんて食べてもらわなくても,あの良さをわかってくれる人はこの世の中にきっといる。
納豆コーヒーゼリーサンドに罪はありません。
鈴鹿に行かなきゃ食べられなくなった,あの不思議な一品。
いつかまた会える日まで,スーパーの納豆を白いご飯と食べて,ひとり我慢します。
今週のお題「納豆」