生きた証をつらつらと 〜2つのがんを同時に患いました~

直径10cm・転移3か所・ステージIIIの乳がんを切らずにUMSオンコロジークリニックで治療し、子宮頸がんも4度の手術で温存して12年が経っても、まだ息をしている女の生き方

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「人生なんとかなる」とか「生きていればいいことある」なんて嘘です

前回の記事はこちらから読めます↓ 

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人生なんとかなるものさ

生きていればいいことあるから

明けない夜はないから

 

2つのがんになって,丸1年を治療に費やしている間,たくさんの人からこういうことを言われてきました。

そこから12年が経ち,今日までも言われてきました。

 

嘘です。

これらすべて,嘘っぱちです。

 

でも,幸せです。

幸せというか,穏やかに生きています。

 

少なくとも,深く悩みの沼に沈むことはなくなりました。

もちろん,とても凹んで暗くなるときもありますが,以前のような,何日も,何週間も,何か月も,と引きずることはなくなりました。

 

そのことを少し掘り下げてみます。

「なんとかなる」のではなく,なんとかする

明けない夜は誰が明けさせるのか

「明けない夜はない」と,よく言います。

だけど,悩んでいる間のその瞬間は,夜です。

ここで言う「夜」は,悩んでいる状況や事情が暗いという,例えです。

深夜の2:00とか,そんな話のことではありません。

 

時間帯に例えたように,悩み続けている間は,自分の力で夜を明けさせるのは不可能です。

せいぜい,部屋を明るくして,朝の光を演出するくらいです。

これも例えてみれば,作り笑顔とか,酒を飲んで忘れようとする,などが相当するでしょうか。

つまり,自分の心の中では夜が続いている状態です。

 

とはいえ,夜=つらい事情や悩みから一刻も早く抜け出したいです。

自分で考えるのも限界がありますし。

  

そこへ来て「明けない夜はない」とか言われても,それは励ましでも何でもありません。

高みの見物をしている人の言葉にすぎません。

 

言っている本人は,相手のことを心配して言ってくれているのでしょう。

それはありがたいし,嬉しい。

力になるのは間違いない。

ですが,そこから先がどうなるかは,誰にもわかりません。

解決法は単なる「可能性」

医者やカウンセラーやコンサルタントが示してくれる解決法や考え方は,あくまで「可能性」にすぎません。

 

私の場合,最初の子宮頸がんで2回の手術を受けたとき,当時の主治医に言われました。

「この手術を受けた人の7割くらいは,再発していません」

ということは,残り3割が再発したということですね。

 

3年後,再発しました。

私は少ないほうの3割に入ってしまったのです。

 

再発しないであろう可能性を提示されましたが,再発したほうのグループに入ったわけです。

確率というものは,まさしく単なる確率にすぎず,自分にそれが当てはまるかどうかを悩む材料ではないのですね。

つまり,単なる「可能性」の話をしているだけのことなのです。

 

こうした事実が,何度となく目の前に突きつけられてきました。

 

そのたびに,「いつかいいことがある」と自分に言い聞かせてきました。

でも,いいことなんて起きませんでした。

 

だけど,今はその頃よりは幸せで,穏やかな日常を過ごしています。

 

夜は明けました。

人生,なんとかなりました。

生きてきたおかげで,いいことがたくさんありました。

自分で「なんとか」する

自分でなんとかするんです。

目の前に現れた苦難を,自分で片づける,それだけのことをやるだけです。

 

ここで重要なのは,「なんとかしてやるんだ!」とか考えないこと。

そして,そもそも,その苦難を「しいこと」「しいこと」として評価しないこと。

 

目の前にあるのは,ただの事実,それだけです。

事実に対して,できるだけ順序よく片づけていくのです。

 

その結果,「なんとかなった」のです。

結果として,「夜が明けた」のです。

 

もちろん,「人生なんとかなる」「生きていればいいことがある」と言い聞かせることは無駄ではありませんでした。

ですが,それにすがるのではなく,そして,それを目指すのではなく,「自分のあるべき姿」として置いておく。

「あるべき姿に軌道修正していく」という言い方のほうがしっくりくるかもしれません。

自力ではなんともできない人には「寄り添う」だけでいい

悩み相談や考え方の本などを参考にするのは,全然ダメではありません。

むしろ,良いヒントをくれるものだと思います。

 

誰かに悩みを打ち明けたくなる気持ちも湧いてきます。

誰かに頼りたいときもあるでしょう。

でも,相手によっては,期待どおりの結果にならないかもしれません。

かえって逆効果になることだってあり得ます。

 

悩みを話すときは,だいたい自分の答えが決まっていて,それを後押ししてもらいたい欲望があることがほとんどです。

いろいろと悩んで,考え抜くことも大事です。

ですが,悩みの沼に沈んでしまったら,私のように病気になってしまったり,自ら死を選ぶようなことにもなりかねません。

 

そういう人に,明けない夜はないとか,なんとかなると言ったところで,簡単に抜け出せるわけがないのです。

 

 

最終的には,自分でなんとかすることになりますが,自力ではどうにもならない人が身近にいたら,「なんとかなる」「いいことある」「夜は明ける」なんて,簡単に言わないでください。

 

ただ寄り添うだけでいいのです。

「何かできることがあったら,遠慮なく言ってね」と伝えればいいのです。 

 

たとえ,それが経験者であったとしても。

がんになった私ですら,がんの人に「なんとかなる」なんて言えません。

その意味では,このブログも単なる「励まし」「可能性」の提示でしかありません。

 

その提示から得たヒントを元に,一つずつ「なんとか」してみてください。

いいことがある“かも”しれません。

そうしたら,いつの間にか,夜だった外界は,朝どころか晴れた昼間になっているかもしれません。

逃げるなら一生懸命やってから逃げる

逃げたくなるかもしれない,その事実を受け入れて向き合う気持ちを作ることが先です。

逃げるのも全然アリです。

ただし,適当に考えて逃げるのではなく,一生懸命考えて,真剣にやってから,逃げましょう。

逃げることありきで考えるのではなく,我慢できるか,違う方法で試せないか,実はメリットもあるんじゃないか,などなどを考えた上で,どうしてもダメなら逃げてもいいと思います。

 

「正面から向き合う」というと,お相撲さんががっぷり四つに構えるかのようなイメージになってしまいますが,そうではありません。

まず,うがった見方をせず,正面から眺めてみるだけでいいのです。

そして,一つひとつ丁寧に観察するだけでOKです。

 

そうして受け入れて進めた結果,「なんとかなったなぁ」「いいことあるじゃん」という実感が得られるのです。

その手応えは,本人が感じられればいいのです。

誰にもわかってもらえなくても,その評価は,後で自分が下せばいいだけです。