「人生なんとかなる」とか「生きていればいいことある」なんて嘘です
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人生なんとかなるものさ
生きていればいいことあるから
明けない夜はないから
2つのがんになって,丸1年を治療に費やしている間,たくさんの人からこういうことを言われてきました。
そこから12年が経ち,今日までも言われてきました。
嘘です。
これらすべて,嘘っぱちです。
でも,幸せです。
幸せというか,穏やかに生きています。
少なくとも,深く悩みの沼に沈むことはなくなりました。
もちろん,とても凹んで暗くなるときもありますが,以前のような,何日も,何週間も,何か月も,と引きずることはなくなりました。
そのことを少し掘り下げてみます。
明けない夜は誰が明けさせるのか
「明けない夜はない」と,よく言います。
だけど,悩んでいる間のその瞬間は,夜です。
ここで言う「夜」は,悩んでいる状況や事情が暗いという,例えです。
深夜の2:00とか,そんな話のことではありません。
時間帯に例えたように,悩み続けている間は,自分の力で夜を明けさせるのは不可能です。
せいぜい,部屋を明るくして,朝の光を演出するくらいです。
これも例えてみれば,作り笑顔とか,酒を飲んで忘れようとする,などが相当するでしょうか。
つまり,自分の心の中では夜が続いている状態です。
とはいえ,夜=つらい事情や悩みから一刻も早く抜け出したいです。
自分で考えるのも限界がありますし。
そこへ来て「明けない夜はない」とか言われても,それは励ましでも何でもありません。
高みの見物をしている人の言葉にすぎません。
言っている本人は,相手のことを心配して言ってくれているのでしょう。
それはありがたいし,嬉しい。
力になるのは間違いない。
ですが,そこから先がどうなるかは,誰にもわかりません。
解決法は単なる「可能性」
医者やカウンセラーやコンサルタントが示してくれる解決法や考え方は,あくまで「可能性」にすぎません。
私の場合,最初の子宮頸がんで2回の手術を受けたとき,当時の主治医に言われました。
「この手術を受けた人の7割くらいは,再発していません」
ということは,残り3割が再発したということですね。
3年後,再発しました。
私は少ないほうの3割に入ってしまったのです。
再発しないであろう可能性を提示されましたが,再発したほうのグループに入ったわけです。
確率というものは,まさしく単なる確率にすぎず,自分にそれが当てはまるかどうかを悩む材料ではないのですね。
つまり,単なる「可能性」の話をしているだけのことなのです。
こうした事実が,何度となく目の前に突きつけられてきました。
そのたびに,「いつかいいことがある」と自分に言い聞かせてきました。
でも,いいことなんて起きませんでした。
だけど,今はその頃よりは幸せで,穏やかな日常を過ごしています。
夜は明けました。
人生,なんとかなりました。
生きてきたおかげで,いいことがたくさんありました。
自分で「なんとか」する
自分でなんとかするんです。
目の前に現れた苦難を,自分で片づける,それだけのことをやるだけです。
ここで重要なのは,「なんとかしてやるんだ!」とか考えないこと。
そして,そもそも,その苦難を「
目の前にあるのは,ただの事実,それだけです。
事実に対して,できるだけ順序よく片づけていくのです。
その結果,「なんとかなった」のです。
結果として,「夜が明けた」のです。
もちろん,「人生なんとかなる」「生きていればいいことがある」と言い聞かせることは無駄ではありませんでした。
ですが,それにすがるのではなく,そして,それを目指すのではなく,「自分のあるべき姿」として置いておく。
「あるべき姿に軌道修正していく」という言い方のほうがしっくりくるかもしれません。
自力ではなんともできない人には「寄り添う」だけでいい
悩み相談や考え方の本などを参考にするのは,全然ダメではありません。
むしろ,良いヒントをくれるものだと思います。
誰かに悩みを打ち明けたくなる気持ちも湧いてきます。
誰かに頼りたいときもあるでしょう。
でも,相手によっては,期待どおりの結果にならないかもしれません。
かえって逆効果になることだってあり得ます。
悩みを話すときは,だいたい自分の答えが決まっていて,それを後押ししてもらいたい欲望があることがほとんどです。
いろいろと悩んで,考え抜くことも大事です。
ですが,悩みの沼に沈んでしまったら,私のように病気になってしまったり,自ら死を選ぶようなことにもなりかねません。
そういう人に,明けない夜はないとか,なんとかなると言ったところで,簡単に抜け出せるわけがないのです。
最終的には,自分でなんとかすることになりますが,自力ではどうにもならない人が身近にいたら,「なんとかなる」「いいことある」「夜は明ける」なんて,簡単に言わないでください。
ただ寄り添うだけでいいのです。
「何かできることがあったら,遠慮なく言ってね」と伝えればいいのです。
たとえ,それが経験者であったとしても。
がんになった私ですら,がんの人に「なんとかなる」なんて言えません。
その意味では,このブログも単なる「励まし」「可能性」の提示でしかありません。
その提示から得たヒントを元に,一つずつ「なんとか」してみてください。
いいことがある“かも”しれません。
そうしたら,いつの間にか,夜だった外界は,朝どころか晴れた昼間になっているかもしれません。
逃げるなら一生懸命やってから逃げる
逃げたくなるかもしれない,その事実を受け入れて向き合う気持ちを作ることが先です。
逃げるのも全然アリです。
ただし,適当に考えて逃げるのではなく,一生懸命考えて,真剣にやってから,逃げましょう。
逃げることありきで考えるのではなく,我慢できるか,違う方法で試せないか,実はメリットもあるんじゃないか,などなどを考えた上で,どうしてもダメなら逃げてもいいと思います。
「正面から向き合う」というと,お相撲さんががっぷり四つに構えるかのようなイメージになってしまいますが,そうではありません。
まず,うがった見方をせず,正面から眺めてみるだけでいいのです。
そして,一つひとつ丁寧に観察するだけでOKです。
そうして受け入れて進めた結果,「なんとかなったなぁ」「いいことあるじゃん」という実感が得られるのです。
その手応えは,本人が感じられればいいのです。
誰にもわかってもらえなくても,その評価は,後で自分が下せばいいだけです。