生きた証をつらつらと 〜2つのがんを同時に患いました~

直径10cm・転移3か所・ステージIIIの乳がんを切らずにUMSオンコロジークリニックで治療し、子宮頸がんも4度の手術で温存して12年が経っても、まだ息をしている女の生き方

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【UMSオンコロジークリニックの思い出】のんびりまったりな診察

 前回の記事はこちらから読めます↓ 

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『UMSオンコロジークリニックでの入院生活をほじくり出そうシリーズ』です。

(当時の名称はUASオンコロジーセンター)

前回と同じ2008年7月4日の日記から。

 

私の乳がんは,直径10cmにも大きくなっていたため,ピンポイントより先に胸全体に放射線をかけることから始まっていました。

そのやけどが,あまりにもかゆくなっていたので一旦それをやめてみようということになりました。

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「その間にピンポイントを始めますか」

え?

その間ってことは,また後で薄く広く全体にかけるヤツにも戻るの?

「うん,そうだよ。今週は肌を休めて,その間に,小さいのに対してピンポイント」

転移のヤツとか?

「うん,あと,深いところにあるヤツもね。全部で3つ,こいつと,こいつと,こいつ」

へぇ,癌研(※現在のがん研有明病院,当時は癌研有明病院と表記されていたため)の細胞診の針が刺さりにくかった所もだ。

「脇の下というより,肋骨のそばってカンジだね」

ふぅん。

 

でもまた全体にかけるのもやるんでしょ?

「そうだね,どこに潜んでいるかわかんないからさ。 あなたの場合は大きいし,数も多いし,今までで1~2を争うカンジかな」

たしか,センター史上でしたよね?

 

「……」

ぇ? 先生の治療史上? まーじーでー?

「でも,もっと数の多いカンジの人でキレイに治った人もいるから,大丈夫だと思って,やってるんだけど」

 

先生,わたしの腫瘍は水の中のマリモみたいになっている画像を見たんだけど,放射線を当てることによって,その水分とか腫瘍とか,どこに行くの?

「体液にうまく吸収されていくとか,蒸発するみたいに消えたりとか,そのまま残っちゃう人もいるしね。 消えないで大きくもならないから,そのまま治ったとすることもある」

 

肺がんの人が腹水が溜ったりとかするっていうから,わたしの腫瘍の中でもそんなことが起きてるのかと思ってた。

「そういうのとはまた違ってくるんだけど…  あなたはそんな風になってないよ」

 

え? そうだっけ? セカンドオピニオンの書類で,二層になった画像見ましたよ。

「水が溜ってるようなんじゃなかった」

そっか。

癌研の先生に言われたのは間違いだったのか。

 

「あ。あった」

ぉぃ。

「このCTの画像で見ると,ここらへんだね。でも,だいぶ小さくなったよね。これで見ても,右と左では大きさが違うから」

ホントだー。

寝て撮るから横にだらーっと流れて,お餅みたいな形に映っちゃってるけど,2カップ分くらい大きいのが,すぐわかるぅ。

「じゃあ,今度の土曜はお休みして,月曜日また全体に放射線かけましょう」

はーい。

わかりましたー。

ありがとうございました。

失礼しまーす。  

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“水の中のマリモみたい”と表現したのは,丸い形の病巣が3〜4個くらい固まって映っていたのを見たことがあったからです。

このブログのタイトルやプロフィール欄でも書いている『直径10cm』とは,何個もできたがんが寄せ集まったものでした。

どこかにその写真もあったと思います。

見つけたら,いつかお見せできるかもしれません。

 

いつも,こんなふうにのんびりと話して診察を終えていました。

がんの治療を終えてからも,いろいろなお医者さんにかかってきましたが,あの穏やかな空気感を他の医療機関で感じたことは,後にも先にもありません。

一口では言い表しにくいのですが,医師と患者との距離が遠すぎず近すぎず,堅くならず,だけどベタベタした馴れ合いにはならない。

それは,一緒に治療していた仲間がみな,異口同音に唱えていました。

 

今はどうなのかは知りません。

なんだかちょっとアグレッシブな印象を感じたこともあったけど,それはたぶん,いろんな批判にさらされてきたからなのかもなぁ…と思ったりします。

 

久しぶりに鹿児島に行きたくなりました。

もうがんにはなりたくないけれど,のんびりゆったりしたあの空間の今を,見てみたくなりました。