生きた証をつらつらと 〜2つのがんを同時に患いました~

直径10cm・転移3か所・ステージIIIの乳がんを切らずにUMSオンコロジークリニックで治療し、子宮頸がんも4度の手術で温存して12年が経っても、まだ息をしている女の生き方

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後悔なんてするわけないUMSオンコロジークリニックの2か月

前回の記事はこちらから読めます↓ 

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UMSオンコロジークリニックで治療受けて後悔してない?

たまに訊かれます。

「鹿児島まで行って乳がんの治療なんて,お金もかなりかかったでしょうし,後悔してない?」と。

 

するわけありません。

楽しいことしかなかったから。

 

もちろん,楽しいことだけ100%なわけないけれど。

嫌なこともあったけれど。

長期の滞在になって仕事も辞めなきゃいけなくなったけれど。

患部はいまも硬いけれど。

放射線やけどの痕も少し残っているけれど。

 

がんはネガティブなことかもしれません。

でも,新しい価値観と出会いをくれました。

宗教じみた言葉かもしれません。

ですが,私は無宗教だし,自己啓発セミナーのような書き方しかできませんが,それが事実です。

明けない夜はない

2008年の6月から7月にかけて,鹿児島に滞在していました。

12年前のちょうど今頃です。

 

当時に書いていたブログの原型である日記は,今も保管してあります。

それを眺めていると,本当にこの2008年は私の人生を大きく変えたんだなぁ…と思わされます。

 

2005年の子宮頸がんに始まり,乳がんで鹿児島に滞在したり,再々発でサードオピニオンまで求めて各地を周ったりと,2008年の丸1年間を入院・治療に費やしました。

悶々としていた最初の入院生活

最初の子宮頸がんは2回の入院・手術でしたが,そのときのことはもう,あまり憶えていません。

入院していた癌研有明病院には,病棟に広い応接スペースがあって,そこで一人で食事を摂ったり,本を読んだりしていました。

同室の人とはあまり交流はありませんでした。

 

夜はそこからディズニーランドの花火が遠くに見えたりして,それを眺めながら,一人で考え事ばかりしていました。

 

何かバチが当たったのかな。

初期とはいえ,2回も手術したし,放っておけば死ぬ病気なんだよな。

だったらそのまま放っておいてもいいかもな。

 

そんなことばかり考えていました。

 

そこから3年。

モラハラを受けたり,セクハラで派遣先を契約解除されたりという日々に苛まれてきました。

 

そして,子宮頸がんの再発とともに乳がんも発症しました。

まずは子宮がんのための入院です。

癌研は3回目です。

 

樹木希林さんの言う「全身がん」のような状態だったのかもしれません。

2つのがんという事実が重くのしかかっていました。

 

ですが,3年前と違うのは,同室の方々がとても明るくて楽しい人たちばっかりだったということ。

そのあたりは,以前の記事にも書きました。

 これはもう,運というか,めぐり合わせでしかないでしょう。

顔ぶれはまったく違うし,相性悪いなと思えば,その場から去ればいいだけのこと。

 

思えば,ここからすでに,鹿児島での毎日を予感させる出会いが始まっていたのかもしれません。

患者のストレスになるようなことはしない

「患者のストレスになるようなことはしない」というのが信念のクリニックです。

 

私は抗がん剤も必要でしたが,2種類の点滴のうちの1つが,放射線やけどの“かゆみ”を助長するとのこと。

本当にあのかゆさだけで,日記を埋めた日があったくらいでした。

過去の記事にも書いています。

標準治療なら,「がまんしてください」で終わりなのでしょう。

 

ですが,このクリニックでの治療は「かゆくなるのが辛いなら,抗がん剤をやめましょう」と言ってくれます。

そもそも,「抗がん剤」と聞いて抵抗感が強いのなら,抗がん剤投与すらやめてもいいのです。

植松先生が著書でも述べています。

抗がん剤ホルモン剤受けるか否かは本人が最終決定できることです。 どんなに周囲が薦めても、本人が断ればそれで完結する話です。本書を読んで,「自分には抗がん剤ホルモン剤の予防投与は不要だ」と無理なく判断できる方が少しでも増えればと期待しています。 「ガイドラインに従って抗がん剤ホルモン剤の予防投与をしないなら、もうあなたの面倒は見れませんよ」などと脅し文句を言う医師もいそうですが、どうせ、その手の輩はガイドラインに従ったとおり一遍の治療しかできないわけですから、本当に転移が出て困ったときには、それこそ本当に面倒をみてくれなくて緩和ケア科を紹介するだけになってしまうのではないでしょうか。(『抗がん剤治療のうそ ~乳がんケーススタディとして~』植松稔 p.172 ワニブックスPLUS新書

(太字加工は当ブログによるものです)

 
あくまで最終的な治療方針は,患者本人の自由意志に委ねられます。
だからといって,わがまま放題していいわけではありません。
ですが,きちんと話し合いができて,納得して治療を進めることができるクリニックなのです。
 
「あのとき,なんでこうしてくれなかったの?!」と言わないためにも,あらゆる可能性はすべて提示してもらえるのです。
 
当時の私は未婚でしたから,排卵障害や脱毛といった副作用はとくに避けたいと考えていました。
それもきちんと断言してくれました。
 
セカンドオピニオンを受けたときの日記にこう書いていました。
 
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抗がん剤の影響などにより,生殖機能に影響が出ることも考えられると何かで読んだのだが,大丈夫かと主治医に尋ねたら,“その後のホルモン治療で,8割の人が生理が戻ってくる” と言われた。
生理がきても、排卵がなければ意味がなーい!
 
…ということを話したら,
「その話を聴くだけでも,抗がん剤のことをよくわかっていないなと思う。
そもそも抗がん剤は卵巣や子宮に影響は及ぼさない。
男性は影響出るけどね」
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この他にも,がんに限らず,後悔しないで済むように,いろんな角度から考えさせてくれました。
クリニック側がやりたいような方向に誘導することもありませんでした。
(治療終了後は,定期的にPETを受けに来るように,ということは言われますが)
 
もしも,このクリニックで治療を受けることを考えている人がいたら,植松先生ととことん話し合ってみてください。
 
時間に限りはあるでしょうが,あらかじめ質問や疑問をまとめておき,どんな小さなことでも,しつこいくらいに食い下がって訊いてください。
それを鬱陶しがるような人ではないはずです。
 
「納得」と「幸福」はワンセットです。
たとえ後悔したとしても,そのときは自分が納得したのだということを胸の中に認めるだけのことです。
納得のその先の,その奥の納得まで求めて,吟味してください。
 
植松先生の本は,本当にわかりやすい言葉で書かれていて,えらぶった専門用語など,ほとんど出てきません。
先生の人となりが伺える内容でもあります。
 
がんの治療法を選択する際には,ぜひ読んでみてください。
 

抗がん剤治療のうそ ~乳がんをケーススタディとして~ (ワニブックスPLUS新書)

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