生きた証をつらつらと 〜2つのがんを同時に患いました~

直径10cm・転移3か所・ステージIIIの乳がんを切らずにUMSオンコロジークリニックで治療し、子宮頸がんも4度の手術で温存して12年が経っても、まだ息をしている女の生き方

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がんになったことを友人にカミングアウトすべきか【相手を選ぼう】

前回の記事はこちらから読めます↓ 

blueguitar.hatenablog.com --------

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がんと告知されて,友人には伝えたほうがいいのかな?
どう思われるだろうか,どう伝えたらいいだろうか。

こうした悩みも出てきたりします。
家族や職場には協力してもらわなければならないし,収入源の確保のためにも,社会生活を営む意味でも,カミングアウトが必要な相手は存在します。

自分ががんになったことをどう伝えたらいいのだろうか。
相手の負担を増やして迷惑をかけるんじゃないか。
そんな不安にかられて,孤独を罪悪感抱くこともあるかもしれません。
今回は,どのようにカミングアウトすべきかどうか,考えてみましょう。

がんになったことをどうカミングアウトしたらいいのか?

誰にでも言っていいわけじゃない

「カミングアウトすべき」かどうかに関わらず,生活上,必要である相手には伝えなければいけません。


家族の助けが欲しいなら家族に伝えなければいけません。

仕事を続ける上でも,いつもと変わらない体調で仕事ができたとしても,遅刻・早退・欠勤して治療をするなら,会社や上司,同僚に伝えなければなりません。

 

そんなとき,相手の反応を予測できますか?
そして,その反応を見た自分は何と思うでしょうか。

 

私は,自分ががんになった事実を突きつけられて混乱する中で,誰も頼れる人がいないと改めて気づき,膝から崩れ落ちました。
「友だち」だと思っていた人をはじめ,関わる人にはほぼ全員に言っていたように記憶しています。
「私,がんになったの」と。
親以外のすべての人に言っていたかもしれません。

 

そこで,またしても私のケースで恐縮ですが,少しご紹介しましょう。

伝え方を苦心しても,伝わらない相手には伝わらない

誰にでも言っていたと上で書きましたが,最初の子宮頸がんが見つかったとき,まず職場に伝えなければなりませんでした。

直属の上司に,手術のため入院しますと伝えたところ,次のミーティングのときには,メンバー全員が知っていました。

 

言いふらす人だとは思っていなかったのですが,『情報共有の徹底』がモットーの職場でもあったためか,一斉に拡散されました。
迂闊でした。

 

「かわいそうに」と泣き出さんばかりの顔をする人 ←心配の押しつけに見える
「休まれたら困るんだよね〜」とふてくされる人 ←それはどうもすみません

 

最初は簡単な手術ですぐに職場復帰できそうだけど,検査の結果によっては,また手術になるかもしれないと伝えたら,
「今回は検査入院ですね,わかりました」
などと誤解する人もいました。

 

ただでさえ,がんと診断されて,心身ともにへとへとになっているというのに,相手からの反応でまたストレスを抱えてしまうことになってしまいました。

 

乳がんになったときは,その経験から少し学んだつもりでした。


子宮がんのときとは違う会社でしたが,同じような目に遭わないように,直属の上司に口止めを徹底しました。
おかげで,ほんの一部の人だけで共有され,いろいろとサポートしてもらえました。

 

それでも,後になって「◎◎さんから,実は言っちゃいけないんだけどね,と前置きされて聞いてたよ」と言われたりもしましたが。

 

そこで,私から言えること。

  • 言うべき相手を厳選して,がんにかかったという事実だけを伝える。
  • その相手がどのように反応するかがわかれば,自分の感情を入れずに伝える。
  • どんな反応をするかがわからない相手には,一切伝えないと腹を決める。
  • そして,箝口令を敷く。

他者の余計な感情に振り回されて疲弊するよりも,自己防衛を優先させるべきだと思います。

後々,「どうして教えてくれなかったんだ」と言ってくる人もいるかもしれませんが,そのときは「心配させたくなかった」「余裕がなかった」と,心からお詫びしておきましょう。

 

がんになったことの伝え方,伝える相手の選び方

寄り添ってくれる人はいますか?

一緒に泣いてくれる人,一緒に笑ってくれる人,という関係性は素敵ですね。
できることなら,そういう人にそばにいてほしい。

がんなどの病気に限らず,何か凹まされるようなことがあったり,とても楽しいことがあると,それを共有できる友人がいると,人生が豊かになります。

友人関係に限らず,家族でも,職場でも,趣味の仲間でも,心配してくれる人がいると,それだけで心強くなります。

 

ですが,やはり世の中にはいろんな人がいます。

私の場合,私のがんを楽しむかのようにイベント化した人もいました。

それは過去の記事にも書きました。 

blueguitar.hatenablog.com

ある人に至っては、自分の知人の医者に私のことを話し、「そういう症例は、手術以外に治る道はないと言われた」とか、また別の知人が保険会社に勤めていて、「そういう症例は、だいたい保険金請求後3年くらいで再発していると言われた」とか、またまた別の知人の親御さんががんと診断されて、「うちの親だって、本当は癌研に入院してもらいたいのにと言われた」とか、友人4人で集まって「あなたの治療は癌研で手術という結論になったから」とまで言い、「手術しないと死んじゃうんだよ!」と叫んでいました。

ちなみに現在,この人とは一切関わりがありません。

どこでどうお暮らしなのかすら知りません。

 

そして,家族はどうでしょうか。
私は,母が遠方に住んでいたため,心配はかけられないと思っていたので,最初のがんのときは言っていませんでした。
さすがに再発と乳がん発症が同時に起きたときは,もう隠せないと思って電話で伝えました。


泣かれたときはつらかったです。
母のことは長年,毒親だと思っていたのですが,これ以来,少し距離が縮まったのもまた事実です。
このこともいつか書いてみましょう。

 

相手が誰にせよ,がんであることを伝えるべき人が,最低1人以上は存在しているはずです。
いや,その最低1人が,伝えるべき相手かどうか,それを吟味する必要があるのです。

 

できれば,相手の反応の予測パターンを考えておいて,それに返せるようになればいいのでしょうが,そんな余裕はないかもしれません。

だって,そもそも自分ががんであることだけでいっぱいいっぱいですから。

 

この人には言いたくないけど,仕事上言わなきゃいけない。

そんな場合もあるでしょう。

そのときは,相手の日頃の言動を思い返してみてください。

付き合いが長くても,相手がどう反応するかわからない場合もあるかもしれません。

そんな相手には,事実のみを伝えるに留めておいた方がよさそうです。

 

私の失敗は,誰かに助けてほしい一心のかまってちゃんだった。
その相手を見極めずになりふり構わず話していた。
そのせいで,さらなる疲弊も味わった。

勇気づけられることもあれば,傷つけられることもある。
「がんばって」と言われたところで,がんばれなかったりもする。
「仕事のことは忘れて休んで」と励まされたのに,自分が必要とされないと落ち込むかもしれない。

 

さまざまな思いが湧いてくることでしょう。
自分の感情すらも予測できない状態となることを念頭に,ちょっと一息つきながら,伝える相手と伝え方の吟味をしてみてください。

 

著名人のカミングアウトの扱われ方

メディアはどうしてもセンセーショナルに書きたがります。
「がんにかかった俳優○○さん=がんに勝った」
「がんを告白した歌手●●さん=がんに負けた」

このような切り分け方をしているように思えます。

 

まず,がん=壮絶,がん=死という図式が強調されているんですね。
その上で,「早期発見→すごいね!!」「進行している→なんてことでしょう…(涙)」という演出をし,がん保険や高額なサプリメントのCMを流す。

 

私のブログも「お前だってそうじゃん」と言う人もいることでしょう。
そう思われるのならそれでもいいです。
ただし,私が発信する理由は,がん=死と思ってほしくないからです。

 

治療中は治った人のことだけを見る方がいいと思っています。
治った人を見て「自分もがんばろう」と思ってもらえるのか,「どうして私は当てはまらないの」と嫉妬されるのか,それはわかりません。

 

近年では,著名人のがんのカミングアウトが普通になってきました。
彼ら彼女らは,自らの私生活を切り売りしなければならない場面があります。
公表することで様々な反応があり,それを視た視聴者は,親近感を持ったり,反発心を感じたりします。

 

それと何ら変わりません。
すべての人の反応を把握することは不可能です。
ですから,ほんの一例として,一般人のケースと意見を伝える,これが私のブログの意義だと思っています。

 

そう,伝え方。
ブログであろうと,口頭であろうと,実は本当にむずかしいものですよね。

 

言ってしまって楽になりたい。
そんな思いも当時の私にはあったのかもしれません。
ひとりで抱え込んだら,どうにかなってしまいそう。
誰か,誰か,誰か,誰でもいいから。

 

ですが,言われた相手のことも考えてみるべきでした。
どう接していいかわからないんですよね。

そのことに関する秀逸な記事があります。

www.nhk.or.jp

「たぶん、みんなもどう接していいのか分かっていなかったので、よそよそしいというか、しゃべりかけづらそうでした。下手になんか聞いて・・・とかいろいろ考えてたんじゃないですかね、みんなも」

 

――自分から向き合わなければ、誰も理解してくれない。
そう気づいた山本さんは、自分の思いや体の状況をさらけ出すことにしました。

 

この当事者の方は,自分の状況を職場や家族に伝えることにしたようですね。
ですが,そう思うことがむずかしい人もいるかもしれません。
それに対しては,同じ記事の中でこう書かれています。

いまカミングアウトしないといけないと思うのではなく、自分の楽なタイミングでいいと思います

まさしく,これです。
誰かに言って楽になるのであれば,言うのもアリ。


ただし,家族や職場など,協力が必要な相手には言わなければいけないので,『楽なタイミング』とも言っていられません。

言うべき相手とその文言の吟味,そして箝口令,これを実現するためにも,一息つきながら,そして自分の感情や事実と向き合いながら考えていく必要があります。

 

おわりに

まとめるとこんな感じでしょうか。

言うべき相手がどのような反応を見せるかを予測して,がんにかかった事実と,サポートが必要な内容を綿密に伝える。
できるだけ感情的にならないよう,相手に感謝の気持ちを持って伝える。
どんな反応をするかがわからない相手には,一切伝えない。
そして,箝口令を敷く。

 感情を排除するのはとてもむずかしいことですね。

少し時間をかけてもいいので,ゆっくりと深呼吸をするだけでも落ち着きを取り戻せます。

瞑想などという大げさな考え方でなくてもいいので,ちょっとだけ呼吸を整える時間をとって,悩みすぎないようにリラックスしながら,伝え方を考えてみてください。

伝える相手への姿勢が誠実であれば,必ず伝わりますから。