賢い患者であるために【お医者さんだって人間です】
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前回に引き続き,2008年7月8日の日記からです。
『植松時間』
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「さぁて,どうしようか。いつまでいられるんだっけ?」
ぇ,先生が今月いっぱいかかるっつったじゃん。
これが噂の植松時間?
ある程度の情報以外はテキトーだって説。
「じゃあ,今日から来週月曜まではまた全体にかけましょう。
来週からピンポイントをやりましょうか」
来週からって,のべ15回くらいじゃないですか?
わたしのって数が多くて,間に合うんですか?
「できるよ」
わたしの腫瘍って何個くらいあるんでしたっけ?
「たくさんあるよー。数えらんない」
そか。
それよりも,まだ全体にも照射しなきゃならないくらいの数なのか…
また痒くなるのぅ…?
やだよぅ…
「うーん,避けては通れないからねぇ。そんなに抵抗感あるのかぁ」
点滴もまたやるの…?
「やってく?」
ぇ,やらないよりはやった方が治るんなら,やってく。
「じゃあ,やってってください(にっこり)」
隣の処置室に誘導され,シスプラチン再開。
受けるよ,より良く治るんだったら,受けてくよ。
副作用が強いものならやめとくんだけど, 腫瘍が小さくなっている実感を思うと,威力を期待したくなるから。
植松医師との会話は,やはり楽しい。
ちぐはぐなような,堅いような,そして自分が賢くなるような異空間。
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いつも診察室で先生のサポートをしている看護師のKちゃんとは,同年代で,よくおしゃべりしていました。
もうひとりの同年代の患者だったHちゃんと3人で一緒にごはんを食べに行ったり,仲良くさせてもらっていて,当然,植松先生の話題になったりもしました。
なつかしいな。
Kちゃんも元気にしてるかな。
そのときに聞かされていたのが『植松時間』でした。
コアな部分以外は本当に適当で,時間という概念に関してはゆるすぎるくらいだという話。
考えてみれば,先生もお忙しい方ですから,患者の一人ひとりがいつからいつまで鹿児島にいるとか,すべてを把握できるわけがないんですよね。
そのあたりは,カルテの記録や看護師さんからの報告,そして患者との会話で再確認することになるわけですから。
ベテラン歯科医ですら確認を忘れていた
話は少し変わりますが,現在,私は歯医者に通っています。
前回の診察までは,『カウンセリング』という位置づけでした。
そして先日,本格的な治療がいよいよ始まりました。
詰め物を作り直すのに,歯を削る必要があったのですが,これから始めますという段になって,「次回はレントゲンを撮りましょう」と,カウンセリングのときに言われたことを思い出しました。
神経がないなら,麻酔をしなくても済みます。
神経があるなら,麻酔をしないと激痛です。
一大事です。
あれ?
先生,レントゲンは?
「あ,そうだった,レントゲン撮るっつってたね」
このことを伝えていなければ,きっと激痛に襲われながら歯を削られ,また歯医者ジプシーに逆戻りしていたことでしょう。
もちろん,途中で気づいてストップしたでしょうが,ただでさえ歯のこと全般にトラウマのある私。
(過去記事:歯医者さんがオススメするTePeの歯ブラシ)
加えて,歯の痛みというものは,簡単には言い表せませんから,想像しただけでも恐ろしい。
詰め物が取れたまま放置していた治療痕がむき出しのままで,そこに神経がないと先生は思い込んでいたようです。
それまでセカンドオピニオンを受けた歯医者さんで診てもらって神経があることを確認していることを,私は伝えました。
「痛くないの? 本当に神経あるの?」
そう何度も訊かれるくらいのむき出しぶりでしたから,歯科医師として,神経がないという見立てだったのでしょう。
私は,歯医者さんとのやり取りの中で「本当に神経あるの?」「あるんですよ,これが」と,何度も押収したのが強いインパクトとして残っていたので伝えることができました。
もちろん,先生はベテランの歯医者さんですし,経験からくる先入観というものもあるのでしょう。
そこは素人が責めるべきではないと,私は思います。
『賢い=頭がいい 』ばかりではない
今回のタイトルに『賢い』という表現を用いましたが,『賢い=頭がいい』とか,東大王とか,そうしたイメージをしがちです。
そうではなく,自分の人生に責任を持つためには,自分のことを一番知っていなければならないという意味です。
そして,自分でさえも知ることのできない部分を教えてもらい,治してもらうのがお医者さんの仕事だと,私は思うのです。
がんに限らず,治療という行程に身をおくことになるのなら,本当に病気を治せる最後の砦は自分自身の管理にあるのではないでしょうか。
お医者様だって人間ですから,伝え方も失礼のないように伝えなければなりません。
相手はプロなのですから,敬意の念は持つべきです。
崇め奉るのではなく,実直に疑問や事実,自分の認識を伝えればいいだけだと思います。
それで傷つけられるようなら,誤解は解くべきだし,わかり合えないなら去る。
それだけのことです。
つらいけど。
患者としては,病に襲われた不安から,相手を傷つけるような発言をしてしまうかもしれません。
ですが,それはお医者さんだって同じで,診断の内容とは関係ない部分で患者を傷つけてしまう可能性もあるわけです。
人間対人間ですから。
記憶が苦手ならメモで身を護る
記憶力に自信がなければ,メモを取っておくなどして,小さなことでも把握しておきましょう。
「そーんなこともわからないのー?」なんてことは,お医者さんは言わないはずです。
もしも,そんなことを言う医師に出会ってしまったら,診察室から即刻退室しましょう。
患者としても,お医者さんからの情報はきちんと憶えておきましょう。
素人である限り,少しでも疑問に思ったことは医師に伝えないと,万が一,間違った認識のまま治療が進められてしまえば,痛い目に遭うのは患者です。
自分を守るためにも,賢くあるべきなのです。