私も派遣でセクハラ受けました【『ハケンの品格』で思い出した】
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ようやく『ハケンの品格』の新しいシリーズが放送開始されました。
最初のシリーズが放映されていた2007年当時,私も派遣社員として仕事をしていました。
ドラマはいつも選んで視るほうなのですが,この『ハケンの品格』は毎回楽しみにしていました。
「あるある〜」とか,「いや,それはないよ〜」とか,非現実的なところも盛りだくさんでしたが,それはそれ。
作り話として,あくまでもドラマという娯楽として楽しんでいました。
今回,13年ぶりに始まった新シリーズの第1話で,吉谷彩子さん演じる福岡亜紀が,人事部の正社員からセクハラを受けていました。
私もあります,セクハラ。
ドラマの設定とほぼ同じようなシチュエーションでした。
そのときの気持ちを整理したくなったので,今回はそれについて書いてみます。
派遣と正社員の格差も気にならなかった
このブログでは,2つのがんに同時にかかった話を書いていますが,がんを告知されるまでの私は,悩みの深い沼に沈んでいました。
田舎での生活に見切りをつけて上京し,知り合いが1人もいない状態から生活が始まりました。
高卒で大したキャリアもないので,派遣会社に登録し,夕方まではオフィスワーク,夜と土日はコールセンターと,掛け持ちしていました。
その働き方を3年くらい続けて,少し時給のいい会社に転職しようと決め,あるIT企業を紹介してもらいました。
それまでの会社では,派遣と正社員での差別のようなものは,あるにはあったのですが,そんなに気にならない程度のものでした。
正社員だけの飲み会があっても,知らない部署の人とまで飲みたくないので,別に構いません。
コールセンターでは,派遣のほうが正社員の人数より多かったので,差があったのかどうかすらわかりません。
ですが,新しく派遣されたその会社では,派遣と正社員できっちりと線が引かれていました。
例えば,社用のメールアドレスは,正社員は何でも好きなワードを決めてよくて,あだ名でもOK。
ですが,派遣はID番号のようなものが最初から割り当てられました。
[正社員]
エリコだから eririn@xx.zzz
ガンダム,特にザクが好きだから gundamzaku@xx.zzz
[派遣]
有無を言わさず ab123cde45@xx.zzz
…みたいな。
これで社外の人ともやり取りするのですから,企業としてどうなの?と思わなくもないですが。
会議になると,最初は出席させられていたのに「ここからは派遣は出ていって」とあからさまに言われたりしていました。
もともと,仕事関連の人とは深く関わりたくないと思うほうでしたので,それでもいいと思っていました。
ですが,同じ会社の人とおつき合いするようになったあたりから,ちょっとおかしな方向に進み始めました。
深く悩んだ頃
以前の記事「勉強の習慣化より先にやるべきこと【気がかりなことを解決してから】」に,「子宮頸がんの再発と乳がんが同時に見つかった2008年までは,たくさん悩んでいた」と書きました。
役者として,先行きがまったく見えない。
一人暮らしで,ギリギリの生活費。
モラハラ男からの無期限の無視,など。
まさに,これらを深く悩んでいた時期こそ,この会社に勤めていた頃でした。
特に,同じ会社に勤めるモラハラ男との関係は,本当にきつかった。
仕事関連の人とは深い関わり合いを持ちたくない などと思っていながら,やはり寂しかったのです。
その人こそ,私のがんの原因となった人なのですが,そのあたりはまた別の機会に書きます。
社長が変わった
ちょうどその頃,経営陣の交替がありました。
ベンチャー企業として急成長している会社で,それまでの創業社長は,開発はできても経営はできないということで,どこかから経営面を引き受ける人材が現れました。
新社長は着任早々,従業員すべてに現状をヒアリングし,うまく回っていない箇所を改善すると発信してきました。
私は派遣だから,会議からは外されるだろうと思っていました。
しかし,そうした末端の人からも話を聞きたいと言うのです。
とりあえず,部門ごとの会議のメンバーに加えてもらい,一人ずつ意見を述べていきました。
私も当たり障りのない程度で改善すべきだと思う点を伝えたつもりでした。
ところが数日後,「1対1で話を聞かせてくれ」と新社長から直々にメールが来ました。
どういうことだろう?と思いながら,会議室を取り,社長と話すことになりました。
ひとまず,部署でのミーティングで話したとおりのことをおさらいし,問題点について,もう少し突っ込んだところを伝えました。
だったら,そのことについてもっと聞かせてくれないか,ということになりました。
え,社外でですか。
だったら他の派遣社員とかも来るのかな,と思ってOKしました。
ところが,指定された場所に行ってみたら,私と社長だけでした。
とあるベンチャーキャピタルから出向して,社長業をやっている人だけあって,口はうまいわけですね。
まんまと引っかかりました。
食事をして,もう1軒行きましょうということになり,どこかの高級ラウンジで高いワインをごちそうになりました。
バカですね,1軒目で気づいて帰ればいいのに。
断ったらどうなるか,考えるのが怖かったというのもあります。
2軒目のお店を出て,次は〜と迫られたので,勇気を振り絞って断りました。
「いや,さすがにそれはないです,社長」と。
「すみません〜」と愛想笑顔を振りまいて,駅に向かいました。
そしてクビになった
それはたしか,連休前の週末だったと記憶しています。
それから数日,会社に行くことはなく,久しぶりに出社した感じだったので,たぶんゴールデンウィークだったのでしょう。
出社して早々,所属の課長に呼ばれました。
「あなたは今期で契約解除です」
経営のテコ入れとして,今いる派遣やアルバイトはすべて正社員にする。
でも,あなたは今期までです,と。
明らかな報復人事でした。
きちんと業務をこなし,それなりの評価を得ていました。
自分を過大評価していただけかもしれませんが。
だけど,私よりも寝ていることのほうが多かった別部署の派遣社員の何人かは全員,正社員に登用されていました。
どんな要因を探してみても,週末の出来事が原因としか考えられません。
課長に,なぜ私だけなのかと尋ねても,「社長が決めたから,わからない」としか言いません。
派遣会社の担当者からも,なぜ私だけなのか,何か変なことでもしたのかと問い詰められましたが,「わかりません」とだけ返事しておきました。
おそらく,社長から誘われたけど断った,などと言っても信じてもらえないと思ったからです。
下手すると「自分から誘ったんだろう」「誤解されるようなことをするほうがおかしい」と言われるのが関の山です。
『ハケンの品格』第1話でも,そのようなシーンがありました。
濡れ衣を着せられて,亜紀が悔し涙を流していました。
あのシーンを視て,私も泣きました。
ですが,あのときの私の前には,大前春子も,里中課長も現れませんでした。
その後の私,そしてその会社
残り1か月近くの派遣契約が残っていましたが,勤続1年が経つと,派遣会社から有給休暇がもらえます。
派遣会社の担当者に対しても少し不満はあったので,そことは見切りをつけたかったこともあり,有休の権利を行使することにしました。
その週の4日間くらいで引き継ぎを終え,私は退社しました。
運のいいことに,別の派遣会社から案件をいただき,すぐに転職することができました。
そこでも,派遣として虐げられたりしましたが,モラハラ男の影がちらつく場所から遠ざかることができただけ,精神的にも少しだけ安定に向かいました。
そんな目に遭う可能性もあるのが,派遣という働き方です。
ネット上では感情移入しすぎて「あんなハケンは不愉快だ,見るに堪えない」などと書いている人もいるようですが,フィクションですから。
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現実には,大前春子のように上から目線の発言など,会社ではできるわけありません。
ですが,「どうぞ,クビにしてください。私はどこでも生きていけます」という強さは必要なのかもしれません。
そして,そういう強さも少しは身についたのかなと,今になって思います。
そして,当の企業ですが。
私が退社する頃,社運を賭けた新規プロジェクトが立ち上がっていました。
ですが,それから約1年後,取引先から突然,すべてを白紙撤回することが告げられたと,風の噂に聞きました。
株価は大暴落,上場時の7分の1ほどにまで下げました。
さらにその数年後には,会社の創設者と,私をセクハラした社長とで大喧嘩になり,経営陣は大混乱に陥り,社長は解任されたそうです。
それから10年以上が経過した現在,久しぶりに四季報を見てみましたが,相変わらずパッとしない状況です。
もともと,他にも問題を抱えていたのが積もり積もって,このような冴えない会社になってしまったのでしょう。
因果応報ってこんなことを言うんだなと思いました。
そして,その社長は病に倒れたとか,そうでないとか。
彼にまったく興味はないので,ググったりはしませんが。
それでも私は派遣でいい
はてなの公式サイトのトップページには『キャリア』というカテゴリーが設けられています。
転職やキャリアについて,華々しい記事が並んでいて,私には縁遠いことだなぁと思いながら,その文章力に感嘆させられています。
それを尻目に,散々ひどい目に遭わされてきたようなことを書いてきましたが,派遣という働き方も悪くはないです。
自由度も高いですし。
私にとって,雇われて仕事をするということは,自分の時間とスキルを経営者に買い取ってもらっているにすぎず,そこに生きがいは感じられないからです。
正社員であろうと,派遣であろうと,アルバイトであろうと,パートタイマーであろうと。
わがままなだけです。
気合だけは大前春子,でもスキルやメンタルは,2007年版の森美雪や今回の福岡亜紀のまんまですね。
『ハケンの品格』の新シリーズを視ていて,そんなことを思いました。
自信がないだけ,という見方もできますが,いつかは自分で自分を正当に評価した働き方ができるようになりたいと考えています。
いつになるかはわからないけれど。